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児童養護施設を出た子どもたちに、一番必要な力

児童養護施設を出た子どもたちに、一番必要な力

さまざまな事情から親元で暮らすことができない子どもたちの「家」となる、児童養護施設。法律では20歳になるまで施設で暮らせることになっていますが、高校卒業と同時に進学・就職などで、施設を出る子どもがほとんどのようです。しかし施設を出て初めて社会と向き合う彼らの前には、たくさんの困難が待ち受けています。

頼れる家族のいない子どもたちがいること、もっと知ってほしい

児童養護施設で暮らす子どもたちの背景は、社会問題としてメディアなどでもよく取り上げられますが、施設を出た後、子どもたちにどんな困難があり、どんな支援が必要なのか、なかなか知る機会がないですよね。

そんな子どもたちの現状を少しでも多くの人に知ってもらうため、人気漫画家 こしのりょうさんが書き下ろした漫画「前へ~私はもう一人じゃない~」。

漫画「前へ~私はもう一人じゃない~」を読む

漫画「前へ~私はもう一人じゃない~」を読む

児童養護施設を出て自立する女の子の前に立ちはだかる困難と、それを乗り越えるまでを描いたこの漫画を児童養護施設出身でモデルとして活躍する 田中麗華さんと、自立支援の専門家 藤川澄代さんのお二人に読んでいただき、子どもたちを取り巻く環境や支援活動について話してもらいました。

田中麗華さん

田中麗華さんモデル、タレント。小学校2年生から高校3年生の10年間、東京都世田谷区の児童養護施設で暮らす。自身の経験を生かし、児童養護施設に対する理解を深める社会活動にも積極的に取り組んでいる。

藤川澄代さん

藤川澄代さん社会福祉法人 大阪児童福祉事業協会 アフターケア事業部部長。施設を退所した子どもたちの自立支援を専門にし、ソーシャル・スキル・トレーニングをはじめとしたさまざまな活動を行う。明るく前向きで、多くの子どもの“お母さん”的な存在。

子どもたちの苦悩と自立を描いた漫画「前へ~私はもう一人じゃない~」

田中:「前へ~私はもう一人じゃない~」は、とてもリアリティのあるストーリーでした。主人公の女の子が、母親からお金を無心されて絶望するシーンがありますが、実際に、施設を退所してから親に足を引っ張られて自立がうまくいかなくなるという話を、本当によく聞きます。実は私も、似たような経験をしたことがあるんです。

藤川:つらい話ですが、たしかに“親が一番の障壁になる”というケースは多いですね。でも私たち支援者の立場からは「親に気を付けなさい」とは、決して言えない。やはり自分の親を悪く言われたら、子どもは傷ついてしまいますから。

田中:漫画では、主人公は児童養護施設の先生に支えられて徐々に立ち直っていきますよね。私は世田谷区の施設で育ったのですが、東京都内の施設には「自立支援コーディネーター」という専門のスタッフがいらっしゃって、退所後のサポートをしてくれるんです。

藤川:東京都では、独自の予算で全施設にコーディネーターが配置されていて、私のいる大阪府でも今年度初めてモデルケースとしてコーディネーターを設置した施設があります。これからは他の自治体でも、退所後のサポートが広がっていくと思いますよ。

退所後に味わう孤独感。“寂しさの種類”が違う

田中:自身の経験からも、退所後のケアがとても重要だと感じています。
それまで同年代の子どもたちや先生方に囲まれてにぎやかに過ごしてきて、社会に出たらいきなり一人になりました。私は高校卒業後、短大に進学して一人暮らしを始めたのですが、最初の頃は孤独感にさいなまれてつらい日々を過ごしましたね。

藤川:私が担当した子どもからも、「家に帰って人の声がしないことが、寂しすぎて耐えられない」という声を数多く聞きますね。常に大人数で暮らしてきた施設の子どもたちは、一般家庭の子たちよりも、一人暮らしの孤独さがいっそうこたえるのでしょう。同じ冬でも、北海道と東京とシベリアの寒さがそれぞれ違うように、“寂しさの種類”が違うのだと思います。

「自分が何を知らないのか分からない」ことが怖かった

田中:施設を退所した直後は気持ちの面でも大変ですが、生活の上でもいろいろと苦労しました。ずっと施設で暮らしていると、普通は親から自然と教わることも知らないということが多いんです。漫画の主人公は、ソーシャル・スキル・トレーニングを受けることで、社会人として生きていく自信を身に付けていますね。

藤川:たしかに私たち支援者もびっくりするようなことを知らない子もいますね。以前、施設を出て就職した子から「香典袋はどこで買うのか」と相談を受けたんです。上司のお母さまのご葬儀だったようで、コンビニで買って金額は先輩と相談しなさいと教えたのですが、なんと紅白の水引がついたご祝儀袋を買っていってしまった。お香典のことは分かっていながら、封筒に慶弔の種類があることは知らなったんですね。

田中:私も「自分が何を知らないのかが分からない」ことがとても怖くて、手探りで知識を身に付けて行く日々でした。主人公のように社会に出る前にトレーニングを受けられていたら、ずいぶん楽だっただろうな、と思います。残念ながら私のいた施設では、こういったトレーニングはなかったので。

藤川:17年前に私がアフターケア事業部でこの仕事を始めた頃は、施設を出た後の子どもたちをフォローする仕組みがほとんどありませんでした。施設で暮らす間は、とても手厚くケアされ、大切に育てられるけれど、社会に出たとたんにそれまでのつながりは急に途絶えてしまう。そのギャップに苦しむ子どもたちに何かできないかと。

田中:藤川さんのいらっしゃる社会福祉法人が先駆けとなって、このようなトレーニングプログラムを始められたんですよね。冠婚葬祭の常識からレストランでのテーブルマナー、お金の使い方まで、本当に充実した内容で。これを受講できる大阪の子どもたちがうらやましいです。

藤川:プログラムは全て、プロ講師に来てもらって、毎年全12~14回にわたって、さまざまなスキルを教えてもらっています。年に1~2回の講座を開いている団体は多くありますが、たしかにここまで充実しているプログラムは他にはないかもしれませんね。
でも、私はこの講座を通じて「失敗しない人間」を育てたいわけではないんです。

祝儀・不祝儀袋の使い方講義の様子

「経験」がソーシャル・スキルを高める。
子どもたちの自立を支えるために、本当に必要なこと

藤川:いくら講義を受けても、自立に関して全てのことが完璧にできるはずはないですよね。むしろ、「失敗する経験」を、どの子どもにもたくさん積んでほしい。施設で育った子どもたちはとかく守る対象になりやすく、大人にかばわれることが多いように思います。

田中:たしかに、施設の先生方はいつも気を配ってくださいますね。でもその反面、大人の目を過剰に意識してしまう部分もありますね。反抗期の真っただ中でも、うまくその感情を出せなくて「いい子」を演じるような…。私も高校を卒業してから進路を決める際、本当はずっとモデルやタレントにあこがれていたのに、本音を言い出せずにいったん違う道を選んでしまいました。結局は夢をあきらめきれずに、現在に至るわけですが。

藤川:全員が田中さんのように、貫き通せる強さがあるわけではないんですよね。自分の中に「施設で育った」という劣等感がどこかにあって、自信がない子もいます。だから、社会に出てビジネスマナーや一般常識でいったんつまずいてしまうと、立ち直れないことが多い。さっき話した、葬儀でご祝儀袋を出してしまった子は、その件をきっかけに会社を辞めてしまったんです。

田中:分かるような気がします。とにかく施設にいる頃と、その後の人生の差がものすごく大きいんです。

藤川:だから、私たち支援者に必要な心構えは、自立が近づいた子どもたちに「少しずつ現実を教え、うまく社会に適合するスキルを教えてあげること」。叱らず、正さず、注意せずではなく、時にはアメとムチを使い分けることもあります。失敗を含めて、どの子にもたくさんの経験をさせてあげたい。私が考えるソーシャル・スキル・トレーニングの意義とは、実はここにあるのです。

田中:すごくありがたいことだと思います。いつまでも施設に居られるわけではありませんし、その後の長い人生を切り拓いていくのは、自分自身ですものね。
施設にいる私の後輩たちも、厳しくそして温かなまなざしを受け止めながら、自分らしい道を見つけていってほしいですね。

藤川さんのところには、自立した後もさまざまな悩みや心配事などの相談をしにたくさんの人がやってくるのだそう。

児童養護施設で育つ子どもたちにとっては、施設にいる間はもちろんのこと、退所後もつながり続けることが一番の自立支援であり、同じくらい大切だということですね。専門用語では、施設で過ごす期間を「インケア」、退所後のフォローを「アフターケア」と呼び、その間の自立支援の時期を「リービングケア」と位置づけ、とても重視しているそうです。

こういった支援がさらに広がって、たくさんの経験を糧にもっと多くの子どもたちが自信を持って社会に羽ばたけるようになるといいですね。

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(掲載日:2017年12月26日)

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